お墓の選び方

家の近くにお墓があることが、ふつうではない、特別な時代になってしまっているのです。

家の近くにお墓が無い

「お墓を建てる」という言葉があるように、ひと昔前までは墓地の永代使用料を支払い、高価な墓石を購入して工事を依頼し、毎年管理料を支払うという、大きな出費を伴うものでした。お墓選びは家選びと並んで、一生に一度の高価な買い物とされていました。

毎年100万人以上の方が亡くなり、国土が狭く、都市部に人口が集中する日本では、墓地不足の問題が発生しています。本来であれば、生きて暮らす家族のそばに先祖を祀るお墓を建てていましたが、土地や環境の問題から遠方にお墓を建てざるを得ない事情にあります。

家の近くにお墓があることが、ふつうではない、特別な時代になってしまっているのです。

現代のお墓のテーマは「省スペース」

墓石に「〇〇家の墓」などと彫られた従来のお墓のことを「一般墓」あるいは「家墓」といいます。 庶民でも火葬することが一般的となった明治時代に浸透したスタイルと言われます。ところがその後現代に至るまで日本の人口は急増し、今ではざっと計算しても80年で1億人がお墓に入ることになります。当然のことですが、このままでは墓地が足りませんし、やがて日本中、お墓だらけになってしまいます。ひとりひとりが立派なお墓を建てることによって、次世代に生きる人たちの土地を奪っていくことになるわけですから、お墓に対する常識を変えていかねばなりません。

そこで最近では、納骨堂、樹木葬、合祀墓、散骨など、ご自身あるいは遺族の方々のご意思やライフスタイルに合わせた弔い方を選べるようになってきました。いずれも従来の一般墓のように大きなものではなく、遺骨を納める最小限のスペースを意識したつくりになっています。

一般墓

長い間お墓の主流であった一般墓ですが、近年では少子化の影響もあり、お墓の継承者が少なくなりました。個人の所有物ですから、永続的な自己管理が求められます。

納骨墓

納骨できる部屋が何十檀と連なる納骨墓は、基本的にお寺が直接管理する大きなお墓で安心感があります。お墓の移転や分骨もしやすく人気です。親族に限らず、友人や仲間と隣り合わせに眠ることもできます。

合祀墓

基本的には遺骨を骨壺から取り出して、墓所内に直接埋葬します。他の人の遺骨と一緒に埋葬されるため、後からお墓を移すことはできなくなります。当初は別のお墓で、数年~数十年後に合祀墓に眠る、という順序もあります。

納骨堂(ロッカー式)

建物内に多くの納骨スペースが用意されており、区画を借りて遺骨を納めます。昭和初期からの遺骨の一時預かり施設が、現代の埋葬法の1つとして残りました。

納骨堂(エレベーター式)

立体駐車場などのシステムを応用してつくられた納骨檀です。専用ICカードをタッチパネルにかざすと、参拝ブースまで遺骨を納めた厨子(ずし)が運ばれてきます。とても合理的なシステムで、天候を選ばずお参りできる長所があります。

散骨

海や川への散骨、山など陸地での散骨、空中への散骨の3種類があります。日本には散骨の可否を定める法律はありませんが、散骨禁止地域を定める条例はあります。お墓は用意しつつ、ご遺骨の一部を自然に還す方が多いようです。

樹木葬

墓石はなく、樹木や花をシンボルにしています。個別埋葬から合祀まで手法も費用もさまざまです。自然に還るイメージがありますが、実際は土中に設置した塩ビ菅などに骨壺を埋めて保管されますので、散骨とは異なります。

ちなみにお墓選びをしていると「永代供養」という言葉に出会いますが、「永代」は永遠や永久とは意味が異なります。あくまで長い年月を示す言葉であって、例えば三十三回忌まで、といった一定の期間を意味します。 似たような言葉に「永代使用」がありますが、こちらは墓地の使用権を示すもので、お墓を管理する人が居続ける限りその墓地を使用できる、とするものです。

お墓選びで大事なのはアクセスのよさ

鎌倉新書が行ったアンケートによると、お墓選びで最も重視されている項目は「アクセスのよさ」でした。
次いで、「お墓のタイプ」と「金額(予算)」が並び、4位の「宗教宗派」以下を大きく引き離しています。

※鎌倉新書「エンディング産業データブック2018」より

お彼岸やお盆にお墓参りをするために遠く郷里まで大渋滞・・疲れた経験が次のお墓参りを遠ざけます。本来、お墓参りは日常の中に存在するものであり、年に1度のイベントではありませんでした。しかしやがて歳を重ね、アクティブさを失うにつれ、皮肉なことにお墓参りの意味も意義も変化することでしょう。車の運転すらも難しくなっていきます。高齢者にとって、遠くない場所にお墓があることは、とても大きな価値を生みます。

墓守問題

墓守(はかもり)とはお墓の継承者のことです。お子様や親族が代々しっかり管理するならばお墓は永代に渡って守られますが、そうでない場合は、どんなに立派なお墓でも永代使用権が消滅してしまいます。グローバル化で生活の場が世界各地に広がった現代では、「先祖代々の地」という感覚すら薄れていくものと思われます。子や孫が世界に羽ばたくことが普通の生き方になるならば、お墓を継ぐ人がいないという問題はますます顕著になることでしょう。

たとえば、「弔い上げ」といわれる三十三回忌を待って合祀するなど、ある時期までは墓を守り、ある時期からは永代供養墓に移すことによって、墓守不在の心配が解消されます。最近では、子に墓守の負担をかけたくないとの思いを持つ方も増えています。

100万円未満のお墓を求める方が過半数

土地の使用権を取得して墓石を購入し建てるには平均で200万円からの資金が必要といわれます。首都圏では特に高額になりますし、安価な墓地を求めれば遠方になってしまうので、一般墓ばかりにこだわっていられません。

※鎌倉新書アンケート

お葬式にもお墓にも、その後もなにかとお金がかかるのが法事です。亡くなられた方を思えば、すべて立派にしてあげたいとの気持ちを誰しもお持ちです。しかし本当に大切なことは、残された家族、生きている人たちが故人への大切な想いを胸に、心豊かな日々を過ごすことではないでしょうか。お墓にお金をかけるよりも、お墓参りに時間とお金をかけることのほうが、より大切に感じられます。

人それぞれのお墓選び

立派なお墓に入ることが故人の価値を示すかのような風潮は今でも残っています。
一方で、自然に還りたいからと散骨を望む方もいらっしゃいます。どんな場所にどう眠るか、自然に還るのか、お寺に護られながら眠るのか、ほかにも霊園やビル内の納骨堂など、価値観はひとそれぞれです。お墓はその方がこの世に生きた証ですから、お墓のスタイルは故人の生き方の象徴でもあるわけです。

一方でお墓は、遺され生きる人のためのものでもあります。
故人を弔い敬う心を抱きながら生きることこそが大切なのであって、たとえ立派なお墓であっても、お墓参りの足が遠のいては故人にも寂しい思いをさせてしまいます。できることならばご自宅の近くに、故人の思いや願いをかたちに、末永く、年老いても、事あるごとにお参りできるお墓を、お探しになられることをお勧めします。

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