終活コラム
vol.84
奥深い精進料理の世界
最近ではそれほどこだわる方も多くはないようですが、一般的に年忌法要などの後に頂く食事は精進料理が中心でした。
精進料理に質素や素朴といったイメージをお持ちの方もいらっしゃいますが、限られた旬の素材を丁寧な下処理、手間暇をかけた調理、繊細な盛り付けに至るまで現在の和食のベースになっているとも言われています。そして、精進料理の考え方は現在の懐石料理の基本ともなっています。
また、現在では肉類や乳製品を使用しない野菜中心のヘルシーな食事としても注目されています。精進料理の歴史は古く、地方によってさまざまな特徴があります。そしてけんちん汁などのように、もともと精進料理であったものが、現在の和食の中で一般的なものとして食べられている料理も沢山あります。
最もポピュラーな精進料理といえば
歴史ある精進料理の中でも、現在最もポピュラーなものといえば豆腐ではないでしょうか。豆腐の原料は大豆ですが、肉類などを使用できない精進料理において、大豆は貴重なたんぱく源であり、限られた食材で多様な料理を作るために欠かせない素材です。
豆腐の歴史は長く、その中でさまざまな加工法でさまざまな豆腐が作られています。最も有名な高野豆腐は、豆腐を乾燥させた保存食で名前の通り高野山で作られていますが、東北地方でも同じ製法の凍み豆腐と呼ばれる保存食があります。佐賀県では豆乳に葛やデンプンを混ぜて作る呉豆腐という郷土料理があります。プルプルの食感が特徴で、デザート感覚で食べられる事もあるそうです。その他にも、大豆は使用しませんが奈良県では特産の吉野葛とゴマを原料に作られているゴマ豆腐が有名です。
豆腐をさらに加工する「がんもどき」
加工食品である豆腐をさらに加工したものの一つが「がんもどき」です。関西では「ひりょうず」と呼ばれています。がんもどきは豆腐をつぶして野菜と混ぜ、油で揚げた料理です。諸説あるようですが、肉類を口にできない僧侶が雁の肉に似せて作ったことが名前の由来と言われています。使用する食材は、ゴボウやニンジン、山芋などの根菜や干しシイタケやきくらげなどのキノコ類、ひじきなどの海藻類やぎんなん、ゆりねなどその時旬の食材や土地の特産品を混ぜて作られるのが一般的です。おでんの具やあんかけなど、精進料理の中でも現在一般的に食べられている料理のひとつです。限られた食材を創意工夫により美味しくいただくという精進料理の考え方がよく表現された一品ですね。
精進料理は、ヘルシーでありながら季節の移り変わりを食材から感じる事ができますし、和食の原点を堪能できる伝統的な料理です。実際にお寺で食べることが出来るイベントなどもあるようですので、歴史ある精進料理を趣あるお寺で頂くといった贅沢な休日を過ごしてみるのもいいかもしれませんね。