終活コラム
vol.71
関東と関西の「お葬式事情」
通夜や葬式は古くから慣習が受け継がれて来た文化と言えるもので、地方によって少しずつ慣習が異なります。 全国の慣習には様々なものがあるでしょうが、ここでは東京を中心とした関東と大阪を中心とした関西の通夜や葬式の主な違いを挙げてみます。
通夜と葬式の日取り
関西では逝去された翌日に通夜、その次の日に葬式が行われるのが一般的ですが、関東では逝去されてから2~4日後に通夜が行われる事が多くあります。 これは慣習と言うより、東京などでは葬儀会館や火葬場が混んでおり、希望の日程で通夜や葬式を行う事ができず、待ちが生じる事が多いためです。 逝去されてから通夜まで2~4日も間が空く事は、バタバタする必要がないと言う側面もありますが、ご遺体を何日間もお守りする大変さがあります。
通夜での食事を振る舞う範囲
通夜では食事やお酒が振る舞われるのが一般的ですが、この食事を振る舞う範囲が関東と関西では異なります。 関東では、通夜に参列された方すべてに食事が振る舞われるのが普通です。参列者の人数が事前に把握できないため、料理はお寿司などを大皿に用意されるのが一般的です。 関西では通夜に参列した一般の方は、通夜式で焼香を上げるとそのまま帰路に付かれ、親族やごく親しい友人などに限って料理が振る舞われ、食事をしながら故人を偲ぶのが慣習となっています。
花輪と樒(しきみ)
最近の葬式は葬儀会館で行われる事が一般的となり、関東でも関西でも式場内の祭壇の近くにお花を供えるだけになっていますが、自宅で葬式が行われるのが一般的であった頃には、その家の入り口の両側に、関東では花輪が、関西では樒と言う植物の葉の飾り物がずらりと並べられていました。 この花輪と樒の違いが、関東と関西の葬式の風景の大きな違いであると共に、その飾りの多少で葬式の規模を感じたりしたものですが、最近ではこの習慣そのものが無くなりつつあります。 こうした名残で、葬儀会館の入り口に1対のみ飾られているケースもありますが、この場合にも関東では花輪で、関西では樒が一般的です。
香典の受領
関東では現在も香典を受け取るのが一般的ですが、関西では最近になって香典を受け取らないケースが増えています。 香典を受け取らない場合には、記帳する受付の前に、故人の遺志により「香典の義はご遠慮申し上げます」などとお断りの言葉が掲げられています。こうした場合には、素直に香典を遠慮するのがマナーと言えるでしょう。もちろん、関西で香典を受け取られないケースでは、四十九日後のお返しはありません。 関東で香典を受け取らない習慣が広まらないのは、先に記した通夜に参列した方すべてに食事を振る舞う習慣と関連しているのかも知れません。
骨拾いの慣習
骨拾いを行う際に、関西では普通に一人で箸を使い、骨をつまんで骨壷に入れます。しかし関東では必ず2人が対になって箸を使い、骨を拾って骨壺に入れます。 また関東ではすべての骨を大きな骨壺に入れて持ち帰りますが、関西では関東より小さな骨壺に骨を入れ、入りきらずに残った骨は共同埋葬場に葬られます。 ちなみに、お墓にお骨を納める場合、関東では大きな骨壺をそのまま納めますが、関西では骨を布袋に移して納められます。関西の慣習は、遺骨を大地に帰すためと言う考え方に基づくものです。 東京を中心とする関東と、大阪を中心とする関西では、通夜や葬式に関して以上のような慣習の違いがあり、色々な考え方はあるでしょうが、関西の方が合理的で現代感覚にマッチしていると言えるかも知れませんネ。 関東と関西の違いの様に、通夜や葬式の慣習が地方によって違いがある事を、宗派による焼香などの作法の違いと合わせて知っていると、通夜や葬式に際して戸惑う事がありません。