終活コラム

vol.89

海外の無縁墓事情 イギリス

イギリスでも生涯独身で家族も親しい友だちもなく無縁仏になる人たちが最近増えています。格差社会が日本より顕著で、貧困層はお墓さえ持つことが難しくなっているのが最近の社会問題です。

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無縁仏になったマークさん

マークさんは、身寄りのない中年男性でした。10年以上失業中で生活保護を受けていましたが、昨年、膵臓がんで亡くなりました。葬儀の費用は市の福祉課から支給され、少ない予算で葬式、出棺などが賄われました。火葬場併設の葬儀場に集まったのは、友人1人と市のソーシャルワーカーだけでした。最低限の費用で、参列者がほとんどいない静かなお葬式でした。 簡素な葬儀の後、マークさんの遺体は直ぐに火葬されました。遺族が遺骨を拾う「骨上げ」習慣はヨーロッパにはありません。遺骨は、火葬場の職員によって特別なマシーンで粉骨され、約3キロの灰になりました。
マークさんの遺灰の埋葬場所は、火葬場に併設された「思い出の庭園」の花壇でした。火葬場の職員によって、遺灰は花壇に撒かれました。散灰もあっという間に終わりました。家族のいないマークさんは、納骨堂やお墓に入ることもできませんでした。マークさんに家族がいれば、遺灰を薔薇や木の苗と一緒に「思い出の庭園」に埋め、それがお墓に代わりになり何かしらの供養ができたはずです。それさえもしてくれる人がいなかったのです。身寄りのない老人や貧困層は、マークさんのような最期を迎えるのがイギリスでは当たり前になってきています。

89-03

イギリスの無縁墓

一族の墓を持っている人は代々裕福層で、一般の人達は個人の墓を持つのが普通です。軍人は軍人専用の墓地に埋葬されます。納骨堂もありますが、個人のお墓が通常の埋葬方法です。日本の様にお彼岸にお墓参りする習慣はなく、故人の命日や気の向いたときにお墓参りに行きます。 市営の墓地は一般的に50年間のリースです。リース期間が切れて、遺族からの契約更新がない場合は、墓石や記念碑、骨壷などをすべて取り除き、更地にします。イギリスでは火葬が一般的です。骨壷の中の遺灰は合祀墓に納められたり、墓地の敷地内にある慰霊塔広場に撒灰されたりします。市営墓地は土地の余裕がなく、お墓の区画を買うにも順番待ちなので、リースが切れたお墓は次々と区画として売りに出されています。更地にした区画を新しい墓地のリースに出します。 戦前の古いお墓で、田舎にある無縁墓は放置されて、雑草が生い茂り、木が生い茂ったジメジメとした墓地に忘れられたようにひっそりとあります。墓石も傾いたり、倒れたり、遺族が誰なのかも分かりません。忘れられた場所として、誰ももう足を踏み入れません。

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ボランティアが無縁墓を供養

イギリスはボランティア活動が盛んな国です。企業の社会貢献ボランティア活動CRS(corporate social responsibility)で墓地の掃除や供養が行われています。雑草を抜いたり、木の剪定やゴミ拾い。花を供養に添えたり、墓地が荒らされていないかパトロールもします。 ささやかですが、企業や地元のボランティアが墓地の管理に貢献しています。ボランティアが手入れをしている墓地は、比較的新しい霊園や有名な霊園です。あまりにも荒れ果てた墓地や小さな墓地は手入れされずに放置状態にあるのが現状です。 無縁仏や無縁墓はどこの国にでもある出来事です。日本でいう永代供養はますます必要になるでしょう。

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